クラス2ndとして地道に仕事をこなして早3年の彼が、2ヶ月前念願の昇進を果たした。
飛び級でソルジャーになったのは良いけれど、憧れの1stになるまでの道のりは遠かった。
ザックスは俺の友だち。
仕事に対する嫉妬や競争心は消せないけれど、頑張ってる姿を見ていた身としては素直に嬉しかった。
ザックス自身も言葉通り跳ねて喜んでいた。
だから、久しぶりに一緒に飯を食ったときのしょぼくれた顔がとても意外だった。
「なあ、クラウド。」
覇気のない声。ぼやっとした瞳。色だけはくっきりとしてるけど。
「今になって気付いたんだけどさ。」
「うん?」
「俺さあ、別にソルジャーにならなくてもよかったのかもしんない。」
「は?お前、何言ってんの?」
つい素が出た。ザックスは気にせず続けている。
「1stになったら、もっと色んな仕事をやれると思ってた。」
「……。」
「ヤバイミッションとか、スパイみたいなこととか。」
言葉は抽象的だし馬鹿丸出しだが言いたいことは伝わってくる。
「セフィロスとこなすんだって思ってたんだよ。」
「セフィロスさんと?」
鸚鵡返すと、ザックスは、うん、と頷いたまま顔を上げない。
「でも、いざなってみたら…一緒の仕事なんてちっともないんだ。一般兵とか3rd、2nd連れて部隊長やったりとか、最初のミッションは旦那と一緒だったけど、それにしたってほとんど別行動だったしさ。」
「そりゃあ、1stは少数精鋭だもの。固まって仕事はないだろ。」
「そぉおなんだよ。」
力強く応えるザックス。でもすぐに抜けた声でへろへろと情け無い声を出した。
「でも、そんなの、考えてもみなかったんだよ、今まで。」
ザックスは一瞬だけ顔を上げて此方を見たかと思うと、また背中を丸めてしまった。
「これじゃ2ndの方が良かった、仕事中も旦那と一緒だったし。当てが外れた。」
苦笑してしまう。だってこれじゃあまるで。
「恋してるみたいだね。」
ハリネズミはおどけて笑うと、すぐにつまらなさそうに口先を尖らせてしまった。
加えて半眼になっている。
「ははあ、それじゃ俺は今失恋してるわけね。」
「セフィロスさん、何か言ってた?」
「『おめでとう、これからも励め。邁進しろ。』」
「いい先輩じゃない。」
「知らねえよ。」
すっかりむくれている。
「旦那のばかあ〜〜もお〜〜〜〜」
はああ、掛ける声も見つからない。

094 こうなったら涙で枕を濡らしてやる