宝条が階段からすッ転んだという話は聞いていた。彼は頭がイカレてるが神羅にはまだなくてはならない存在である。周囲がこぞってやれ精密検査だの休養だの唱える中、ご本人様はケロッとして「ええい五月蝿い。わたしはなんともない。いいから散れ!研究の邪魔だ!!」追い返した。
数日、数ヶ月経っても宝条の様子は相変らずで、本当に大丈夫らしいと社員が安心した頃、異変に気付いたのがセフィロスだった。
セフィロスは宝条が嫌いだ。どうでもいい。死んでくれてもいい。そう思っていた。
なのに!
「この馬鹿博士と来たら、下らんサンプルのことは隅から隅まで知り尽くし覚えているのに、俺のことはまるで覚えていない!!!」
「なんだ貴様は気安く触るな!!」
「うるさい!どうでもいいからさっさと俺を思い出せ!!」
「ああ痛い!この馬鹿力め!!何をするんだ。わたしは正常だ。離せこのデカ男!!」
「なんだとこの研究オタク!!!散々人を弄り倒しておいて!!!」
「お前のような粗暴な輩わたしの合成獣の餌にしてやるからな!!」
「馬鹿馬鹿しいことを!お前の作った小猫なんていつでもミンチにしてやる!!!」
段々激しさを増していく口論に周囲がざわめき出していく。
宝条の手を無理やり引っ張り医療部門へ押しかけてきた英雄の話はたちまち社内を駆け巡ったそうだ。