平和な日常にスパイスが欲しいとザックスが愚痴っている。テロ多発のご時世に何を言っているんだこの頓痴気は。
日増しに愚痴が酷くなるものだからセフィロスは「実はお前のことが好きなんだ。」と告白してみた。
もちろん冗談でだがお望みのスパイスにはなるだろうと真剣な顔をしてだ。
時折ザックスが熱っぽい目で見つめてくることもあったからちょっと試してやろうという悪戯心もあったのだがさておき、本気か冗談かと問答が続く。本気だと答えるとはりもぐらはいかにも困惑した表情で心許無さ気に両手の指を間誤付かせていた。
その反応に内心戸惑ったのはセフィロスの方だった上に「オレ、ガチムチ系が好みだから…」なんて返事をもらってしまったものだから彼は握っていたペンをへし折ってしまいそうになった。
え?それリアルに??
彼の胸に去来する空しさが、冗談だったのにうっかり失恋してしまったせいだからなのか、珍しく蒼い瞳を床に向けてしょんぼりするザックスに釣られたからなのかはわからなかった。
二人がずいぶん長い間沈黙する中、執務室の出入り口付近で二人とと同じような顔をしている人影が一つ。

帰り道、「旦那なんて崖から落ちて死んじまえ。」ザックスはぽつねんとひとり呟いた。
呟きにしては少々物騒だが仕方ない。
ザックスはセフィロスが好きだった。
本当にずっと好きだった。
好きだからこそ、相手の好きが本気か嘘かわかってしまう。
ああいうことは冗談でも言って欲しくなかった。
俺も子どもなんだなぁとザックスは落ち込んでしまう。

しょぼくれながら帰宅すると、ルームメイトのチョコボが一生懸命プロテインを飲んでいた。
立ち聞きしてたんだな、クラウド。
変な三角関係も長いこと続いてるなと思う。

…ごめん。冗談でもせめてスジ筋にしとけばよかった。

019 ボケにボケで返す自称ツッコミ