一緒にお風呂に入りたいと、チョコボが言い始めた時点で何か変だと気付くべきだったのだ。
滅多にない誘いに柄にもなく浮かれた自分が情けない。
だがしかし。
「剃ったら、興奮するんだって。」
じゃねえよ。
普段ははねっ返りでも自分と一緒にいるときは従順で尽くしてくれて、アンタのことが大好きオーラを輝き放つクラウドが、どうして剃毛などというマニアックなプレイに挑戦しようと考えていたなどと想像できようか。いや、できまい。いづくんぞなんたらである。
とはいえ、泡だらけの二人。ドア側を背に剃刀を手に持つクラウド。壁とクラウドに追い詰められた俺。
どうすればいい。どうすれば。
こんなのは俺のポジションじゃない。絶対違う。俺はSだ。ドSだ。剃られるのはMだろう。普通そうだろう。セフィロスはぷるぷると顔を横に振る。
未だかつてこれほどまで怯えた英雄を見たことがあっただろうか。
そもそもどこで習ってきたのそんなこと!
「ザックスが言ってた、剃ってもらったら気持ち良いって。」
お前かよ。その歳でそんなところまで行ってるのかお前は。俺だってむしろやろうかと思ったけどただでさえ犯罪なのがさらに犯罪臭漂うから自粛してきたというのになんということを。ていうかクラウドに教えるなよそんなこと。
「なあ、セフィロス。」
そんな目で見ても駄目だから。いくらクラウドのお願いでもこれだけは駄目だから。剃られてたまるものか。剃られてたまるものか剃られて

「俺は、セフィロスがしたいことは…セフィロスが喜んでくれるなら嬉しいから何でも受け入れてる、だろ?セフィロスにも、そうして欲しいって思うのは、わがままなのかな……?」

その夜二人は新境地を切り開いた。