打ちに行こうと誘われたので乗ってはみたのだが、如何せんザックスは座った台がまずかった。
12枚のお札を投資で、演出、回転数、目、どこをどうとっても天国に移行しようとしているその台に彼は瞳を輝かせセフィロスに「熱い!!マジで熱い!!おっさん!これきたきた!!」と笑顔を振りまいていた。が、その後の単発止まり。継続89%なのにまさかの11%をザックスは引き当てたのだった。ケーン!
ありえない。口をパクパクさせている彼を横目にご愁傷様と心の中で呟き、セフィロスは淡々と打ち続けていたのだが、直後に物凄い音。隣へ視線を移すとザックスの額が遊技台をぶち抜いていた。
さしものセフィロスも目を丸くしてしまった。馬鹿だ。単細胞だ。いくらショックだからといって物に当たるな。
破壊された遊技台に視線をずらしたところで我に返り、ザックスを諌めようとしていたら店の幹部連中が慌てて駆けつけてきた。ザックスがむくれて喋らないから一緒にいたセフィロスが説教をされた。身分証を見せても店員の親父は怯むことなく、英雄だろうがなんだろうが弁償はしてもらうんだから!と息巻く。
遊技台の弁償費用と色紙にサインを求められる英雄を余所にザックスはやはり拗ねていて「奇跡の1割とかありえねえ」とブツブツ呟いているものだから、さすがのセフィロスも堪りかねて横っ面を引っ叩いて頭を押さえつけて無理やり店員に詫びさせた。
ソルジャーという身分が盾になりその場では裁判沙汰にしないという話にはなったものの、セフィロスを道連れに二人とも全店出禁と相成ってしまった。煙草臭くなったコートの匂いが鼻についた。
帰り道に小気味良い音が響く。
次の日ザックスの額が結構赤くなっていた。
セフィロスの額もちょっぴり赤くなっていた。