軽くじゃれてやったつもりだったのだが、本人はそれはそれは俺の足に憤慨していた。


ミーティングを終えて執務室で書類に目を通し処理をしていく。
事細やかに記された書類の中には副官であるはりもぐらのサインが必要なものが必ず数枚含まれている。
だから、一通りの仕事を終えると帰り際に彼のデスクへ向かうわけだが、そうすると出会い頭から彼は無駄にダラダラと話しかけてくる。よくもまあそこまで舌が回るなというほど喋りまくる。仕事の帰り際とあって俺も時間が有り余っているから自然と耳を傾けるようになる。耳を傾けてはいるのだが彼からすると俺は話を聞いていないように見えるらしい。「ちょっとォ、オッサン聞いてんの?」と中々むかっ腹の立つ言葉を投げてくれる。それを受けて「ああ」と返事はするのだが、ふと端末に目を落とすと電池が残り1つになっていることに気付いてしまう。そして一声かけてコンセントを借り充電させてもらう。
大体いつもこんな感じだ。
普段から電話を受け多くのメールを受信していると充電が減るのも人一倍早い。充電が切れてしまうタイミングが彼のデスクに訪れる頃というのがわかるようになってからは、毎日のように彼が喋る間充電している。これはもはや生活習慣というものであって決して俺のせいではないのだ。だからコンセントにしゃがみ込んだ俺を見て「電気もったい英雄なんて器小さすぎね?」とはりもぐらが言った時は珍しく足が出てしまったのだが、遺憾にもそれが彼の持論を普遍的なものに変えてしまったようだった。